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Friday, April 10, 2020

水銀輸出の減少 最終処分のモデル確立を | 社説 | コラム - 熊本日日新聞

 水銀による環境汚染や健康被害の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」が発効した2017年以降、日本の水銀輸出が大幅に減っている。

 同条約の締約国は20年3月末現在で118カ国に上る。輸出を全面禁止した国もある中、日本は発効後も蛍光灯や血圧計、電池などから回収した水銀を輸出し続けてきた。水俣病患者団体や国際的な非政府組織(NGO)などから批判を受けても政府の姿勢は変わらなかったが、条約に基づく厳しい規制が世界的な需要と供給双方の削減につながっており、結果として「水銀輸出ゼロ」の実現が視野に入ってきた。

 財務省の貿易統計によると、日本の水銀輸出量は過去10年間で条約発効前年の16年がピーク。14万6769キロがインドやコロンビアなどに輸出された。これに対し、19年は2万6082キロでピーク時の82・2%減。輸出先もブラジルやペルーへと変化した。

 輸出の減少は、条約発効に合わせた国内法の整備が大きな要因だ。条約は輸入国の同意のない水銀輸出を禁じており、日本も17年に外国為替および外国貿易法(外為法)を改正。輸出業者に相手国の最終使用者や用途を証明するよう求めたことが、減少につながったとみられる。

 一方で、輸出相手国でも“脱水銀”が進んでいる。現地での主な水銀用途である「カセイソーダ製造の触媒」は条約によって25年までに禁止されるため、需要が先細りになっているという。日本の輸出量の9割超を取り扱う商社は、「近い将来、輸出はほぼゼロになる」と予測する。

 回収された水銀は、再利用する有価物として輸出されている。輸出が減れば行き場をなくした水銀が国内に滞留することになり、廃棄物として安全に管理する最終処分場が不可欠となるが、整備は進んでいない。

 環境省は17年に廃棄物処理法に基づく処理方法を定め、固形の硫化水銀にして安定化し、流出防止のコンクリート容器などに入れて管理型処分場に埋め立てるという方針を示した。

 また、条約発効に合わせた国内法の改正で、木くずや汚泥などを受け入れる通常の管理型処分場でも、都道府県や政令市に許可を取れば水銀廃棄物を埋め立てられるようになった。ただ、追加の安全対策を求められる可能性があるため、現時点で許可を受けた処分場はないという。

 需要の総量は減ってきているとはいえ、一部途上国ではいまだに金採掘現場などで水銀が使われ、深刻な環境汚染と健康被害を引き起こしている。水俣病の教訓を生かすためにも、日本は他国に先駆けて水銀を安全に最終処分するモデルを早急に確立するべきだ。

 水俣市の水俣湾埋め立て地では、大量の水銀汚泥が封じ込められたままとなっている。この「廃棄物」についても、国などが適切に最終処分する責任を負っていることを忘れてはならない。

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