世界主要国ではワクチンの必要回数接種率がおおむね50~60%を上回り、経済活動の再開に向けた動きが加速しつつある。 一方で、デルタ株、ラムダ株など変異種の拡散懸念から、ワクチン接種を店舗入店や交通サービス利用、またイベント参加の条件にするケースが増えつつあり、今後このような対策がスタンダードになってくると思われる。 ●大規模デモが起きたフランスのワクチンパスポート導入 では、世界各地ではどのような対策が導入されているのか。まず、日本でも少し話題となったフランスの動きから。 フランス地元メディアFrance24の2021年7月26日の報道によると、同国議会はレストラン、バー、電車、飛行機など50人以上収容する場所・乗り物を利用する際、利用者にヘルスパスの提示を義務付ける法案を可決。8月から施行開始された。 このヘルスパスを取得するには、ワクチンを必要回数接種することが条件の1つとなっており、実質的にワクチンパスポートと呼べるものだ。 この法案の内容が明らかにされたのは可決される6日前のこと。可決までの6日間で、上院に相当する元老院と下院に相当する国民議会の意見を取り入れた修正版が作成され、それが可決された格好だ。同法案のルールは、状況を鑑みつつ、いったんは11月15日まで適応されるという。 フランスの人口は約6700万人。8月末時点、同国のワクチン接種状況は1回以上接種が72%、必要回数接種が約60%となっている。 ●世界で最も早く必要回数接種率80%を達成したシンガポール 現在、世界で最もワクチン接種が進んでいるのがシンガポールだ。 数カ月前までイスラエルのワクチン接種スピードが話題となっていたが、2021年405月頃にワクチン必要回数接種率が55%ほどで頭打ちとなり、以降はほぼ横ばいで推移している。8月末頃に60%を達成した。イスラエルの人口は約900万人。 イスラエルがワクチン必要回数接種率で60%を達成したほぼ同時期、シンガポールは80%を達成。 シンガポール政府は、この80%を規制緩和のベンチマークとしており、どのような緩和策が導入されるのか関心を集めている。 2021年8月末現在、シンガポールの経済活動の多くは、フランスと同様にワクチン接種を前提としたものにシフトしている。 レストランでの食事については、ワクチン接種証明の提示が義務付けられ、1グループ5人までの入店が認められている。ワクチン接種していない場合は入店できない。 一方、シンガポールのホーカーセンター(屋台村)では、ワクチン接種の有無に関わらず、1グループ2人までの利用が可能だ。 ビジネスカンファレンスなどMICEイベントでは、すべての参加者がワクチン接種済みである場合、最大1000人の参加が認められる。一方で、その条件を満たせない場合は、最大参加人数は50人に制限される。 ワクチン接種率が80%を超えたシンガポールは、9月8日からドイツとのトラベルバブルを開始する。 ドイツでワクチン接種を済ませ、陰性証明を提示することを条件に、シンガポール入国時の隔離が免除される。一方、シンガポールからドイツへの旅行者もワクチン接種と陰性証明の提示で、ドイツでの隔離が免除される。ドイツ側では、2021年6月25日からこの措置を開始しており、今回シンガポール側がそれに応じる形となる。
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