
新しい「RESTAURANT KEI」がはじまる
10カ月に及ぶ大改装を終えた「レストラン・ケイ」に入ると、クリスタルと大理石がパッと目に飛び込んできた。壁一面、チューブ状のガラスを張り巡らせ、大理石の存在が映える。ベルサイユ宮殿に例えたら「ガラスの間」に匹敵する空間だ。いま、フランスではモダンでオーガニック素材をいかした建築が主流になりつつある。そんななか、倒行逆施の改修をした小林圭はいう。 「今の流行はこの先はどうなっていくのかわかりませんが、石の文化は廃れないと思うのです。長持ちするし、磨けば光る。僕がフランスへ来て最初に感動したのは石の文化の豊かさと偉大さ。どの場所にも記憶が刻まれているのに、フランスはそれをどんどん壊しつつあるのが残念です。だからいまパリにいる日本人が石の文化がすごいことをフランス人に訴えかけたら、カッコいいと思ったんです。そして、この改修は10年、20年先も輝きつづける場所でいたいというぼくからのメッセージでもあります」 パリを拠点に活躍する建築家・田根剛氏の手がけた内装はシルバーとグレーが基調。ガラスのチューブをクリスタル状に壁に設え、イタリアから取り寄せた大理石を配置したクリスタルルーム。素材の持つ透明感が光を反射して、ゲストを最も華やかに見せる演出である。 小林圭は、2020年のフランス版ミシュラン・ガイド赤本で3ツ星を獲得した。だが本人は「30年近く料理人をしてきて、ようやく自分の世界観を作っていくスタートラインに立てた」と謙虚だ。 次の目標を尋ねると「確固としたブランドを作りたい。料理も含めて今働いているスタッフのエネルギーのすべてが、うちのダイヤモンドになるかもしれない。料理は人間が作るものですが、まずは素材そのものの生命があって、人間の手によって育てられ、収穫されたものがレストランに運ばれてくる。ぼくはレストランをひとつの会社と見なしています。仕入れ、製造、販売があって、ゲストが来て注文してくださり、料理を完成して提供する。それをダイヤモンドに例えるならば、どの国の宝石商がやってきても自分たちは嘘偽りなく、ここで製造されたダイヤモンドを提供していると胸を張りたい。だから3つ星を獲ったから改装するのではなくて、ダイヤモンドをどの場所で売るかという自己投資の賭けなんです」と言った。 レストランは料理と空間とサービスが三位一体になってこそ、最高のパフォーマンスを届けられる “劇場”であるという小林の考えは一貫している。 シェフ・パティシエの高塚俊也は続けて語る。 「シェフと同じ意識を共有しています。コースはひとつのストーリーとして成り立っていますから、デザートも料理人の発想を取り入れて、徹底的に素材に向き合って物語を締めくくる役目を担っています」 小林圭をトップに「レストランKEI」チームは、3ツ星を得てからもサバイブを続けている。しかしコロナ禍であっても、日本への「Maison KEI」の出店など挑戦を続けてきた。新しいパリの店の内装から、かれらの不退転の決意を感じ取った。
文・魚住桜子 写真・村松史郎
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