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Tuesday, August 15, 2023

デイサービスがレストランに 高齢者の食の楽しみ支える工夫いろいろ - 産経ニュース

「ハッピーデイサービス堺御陵前」で提供される懐石料理=3日午後、堺市堺区(安元雄太撮影)

高齢で食べる機能が衰えても食事を楽しんでもらう企業のサービスが拡大している。介護スタッフがいる施設で高齢者向けに懐石料理を提供する取り組みが大阪で9月にも始まるほか、冷凍食品で手間がかからず栄養も豊富なメニューを定期的に届ける事業も。年老いても充実した食生活を送りたいとの希望に応えようとしている。

マツタケが入った土瓶蒸し、ハモ焼き、和牛ステーキ…。テーブルには次々と豪華な料理が並んだ。ここは高級料亭ではなく、堺市内の高齢者向け通所施設「ハッピーデイサービス堺御陵前」。厨房(ちゅうぼう)では料理人たちが腕によりをかけて調理に励んでいた。

運営するライフケア・ビジョン(大阪市)は自社の27カ所の入居型施設でそれぞれ月1回、利用者に季節感のある懐石料理を味わってもらうイベント「はっぴーデイ」を開催してきた。さらに「家族と一緒に楽しんでほしい」と、利用者以外でも申し込めるレストラン方式で懐石料理を1人8千円程度で提供することを計画している。

店舗の出店は時間と資金がかかるため、自社の通所施設を利用する。9月からまず「ハッピーデイサービス堺御陵前」から始め、手応えがつかめれば広げていく方針だ。

高齢者は食事を飲み込む嚥下(えんげ)機能が低下すると食べ物がのどに詰まる危険性がある。予防するには介助や水分補給、姿勢の確保など介護技術が必要で、スタッフが待機する施設なら安心して食事を楽しめる利点がある。高齢者の状態にあわせて、食材を細かく切ったり、軟らかく調理したりする工夫も取り入れる。

同社を傘下に置くライフケア・ホールディングスの祝嶺(しゅくみね)良太社長(41)は大阪・北新地の料亭で修業した経験があり、後輩の料理人らが調理を担う。通所施設を一般に開放して懐石料理を提供するのは、全国でも珍しく、祝嶺社長は「高齢者でも食欲は旺盛で、おいしいものを食べるときには生き生きする。食の力を感じる」と話す。

一方、クックデリ(大阪市)は介護施設向けに完全調理済みの冷凍食品を製造、定期配送するサービスを行っている。社内の管理栄養士が栄養バランスを考え、二十四節気を基に旬の献立を工夫。大きさや硬さなど食べやすさにも配慮する。

多くの施設は人手不足に直面し、調理員の確保や材料費の高騰に頭を悩ませている。同社の冷凍食品なら解凍して盛り付けるだけで、おいしい食事を提供できるという。

8月上旬には、同社の社員を対象に牛乳を活用した和食などについて講習会を開き、知識を深めた。管理栄養士の坂口真由香さん(34)は「これからサービス展開を考えている病院食は減塩がポイント。牛乳を使うとこしが生まれ、しょうゆ、みその量を減らせる」と説明した。

牛乳を使った和食について社員向けに開かれたクックデリの講習会=大阪市西区

矢野経済研究所は、令和3年度の介護食、高齢者食、腎臓病や糖尿病などの患者向けの食を合算した国内市場規模は、加工食品が前年度比2・9%増の1886億円、給食や在宅配食サービスが同1・4%増の1兆4804億円と推計。「今後は在宅での介護が増える見通し。高齢者が買い物や調理の手間をかけず、栄養に配慮されたおいしく安全な食事を楽しめるようになることが求められる」としている。(牛島要平)

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