「くるくる」が育んだ絆がある。ともに回転レストランがあるセンチュリーロイヤルホテル(札幌市中央区)とリーガロイヤルホテル京都(京都市)は2018年に共同で、「9696(くるくる)」の語呂合わせから9月6日を「回転レストランの日」に制定した。「昭和の象徴」ともいわれる回転レストランだが、都市型ホテルで今も営業する回転レストランは全国でこの二つだけ。センチュリーロイヤルホテルは24年5月末の閉館が決まっており、今年、ともに営業できる「最後の回転レストランの日」を迎える。
回転レストランは床がゆっくりと回転し、窓から360度の眺望が楽しめる。高度成長期からバブル期にかけて全国で建設が相次いだが、近年はビルの解体や施設の老朽化などから回転での営業を取りやめるなど、数が減少していた。
センチュリーロイヤルとリーガロイヤルの交流は、18年春、センチュリーロイヤルの営業企画室支配人、蝦名訓さん(55)の提案で始まった。「同じ『ロイヤル』がつくが、全く関係のないホテル。回転レストランは昭和遺産と揶揄(やゆ)されることもあるが、魅力を知ってもらうため、一緒に盛り上げられれば」との思いだった。直前には東京・紀尾井町のホテルニューオータニの回転レストランが回転営業を終了し、人ごととは思えなかったという。
つてをたどってリーガロイヤルに共同企画を持ちかけると快諾してくれ、1カ月後にはリーガロイヤルの担当者がセンチュリーロイヤルを訪問。9月6日を「回転レストランの日」に決め、8月には日本記念日協会に登録された。記念日の制定は、今後も交流を継続していきたいという決意の表れだった。
その年の9月1日から、双方のホテルのレストランで北海道と京都の食材を使った共同企画がスタート。しかし、初めて迎えた記念日当日の6日午前3時7分、胆振東部地震が発生した。
6日朝、ブラックアウトの中で蝦名さんが出社すると、ホテルのロビーに宿泊客が集まっていた。蝦名さんは宿泊客の対応に追われ、ホテルも2日間の全館休業を余儀なくされた。
しばらくして、センチュリーロイヤルに突然、リーガロイヤルから段ボール2箱の荷物が届いた。事前に連絡はなく、中を開けるとリーガロイヤルのオリジナルリーフパイが大量に入っていた。その後もリーガロイヤルから、共同企画の売り上げの一部を北海道の復興のために寄付したいと連絡があり、手続きをセンチュリーロイヤルに依頼したという。蝦名さんは「まだ数カ月のお付き合いなのに、気遣いにグッときた」と振り返る。
二つのホテルは毎年交流を重ね、今年も9月1日から共同のレストラン企画を実施する。今回は「くるくる」が育んだ絆の象徴として、胆振東部地震で大きな被害が出た厚真町産ハスカップを使ったメニューをそれぞれのレストランで提供する予定だ。蝦名さんは「都市型ホテルにある回転レストランは1軒だけになってしまうが、思いを引き継いでもらいたい」と話している。【今井美津子】
からの記事と詳細 ( 北海道と京都、くるくるの絆 ともに祝う最後の回転レストランの日 - 毎日新聞 )
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