“竹原市吉名町の特産ジャガイモのおいしさを伝えたい”
生産する農家が減少する中、地元の食材にこだわり続ける古民家レストランの店主を取材しました。
(NHK広島放送局 呉支局記者 諸田絢香)
土日限定でオープンする古民家レストラン
竹原市吉名町に毎週土日にだけオープンするレストランがあります。
築120年ほどの古民家を改修したレストランでは、クロダイのフライや、地元で収穫された旬の野菜を使ったきんぴら、それに天ぷらなどの家庭料理をビュッフェ形式で提供しています。
店主は、この地域で生まれ育った西野弘美さん。
地元の食材の良さを知ってもらおうと、16年前に店を開きました。
西野さんが特にこだわっているのが、吉名町で収穫されたジャガイモを使った料理です。この日は、細長くスライスしたジャガイモをチーズと混ぜて平たく焼いたガレットと、甘辛煮を作りました。
地元出身の西野さんがジャガイモのおいしさに魅了されたのは、農家の夫・克志(かつし)さんとの結婚がきっかけでした。
西野弘美さん
「お姑さんがいろいろなジャガイモ料理を出してくれました。新ジャガには新ジャガのおいしさがあり、熟成すればジャガイモの甘さがあることを教わりました。このジャガイモのおいしさを知ってもらいたいと思ってレストランを始めました」
甘みが特徴のジャガイモ
水はけのよい土地を生かして作られる吉名町のジャガイモは、その甘みが特徴です。
瀬戸内海に面した温暖な気候を生かして、年に2回、春と秋に収穫することができます。生産が盛んだった60年前には、1キロあたりの単価が全国で最も高く取引されるほど評価されていたといいます。
しかし、近年は農家の高齢化などで生産量が激減。5年前におよそ783トンあった生産量は、昨年度は514トンほど(速報値)と、減少に歯止めがかかりません。
日常にあるジャガイモのおいしさ
レストランを始めたいという西野さんに、夫の克志さんは当初、戸惑ったといいます。
夫・克志さん
「日常にある物ですから、おいしさに気づいていなかったですよね。食べ飽きたような感じがありました。『またジャガイモかー』っていう感じでした」
乗り気ではなかった克志さんの考えを変えたのは、西野さんのなみなみならぬ熱意でした。西野さんに連れられて、県外の農家が営むレストランを一緒に巡るうちに、気持ちが変わっていきました。
克志さん
「農家さんのお店を何軒か一緒に回ってみて、お客さんもそこそこ来ていたので、これだったらできるのかなと思い始めました。じゃあ、やってみればと」
規格外のジャガイモを活用
レストランで使うのは、出荷できなかった規格外のジャガイモです。少しでも地元に貢献できればと、ほかの農家からも譲り受けています。
西野弘美さん
「いままで捨てていた物がお金になるので、農家さんも少しは元気になれるのかなと考えました。味は変わらず、ちょっと形が悪いだけですから」
レストランの運営には、西野さんの思いに賛同した地域の人たちが協力しています。料理を担当するのは竹原市内にすむ3人の女性で、家庭的で優しい味付けが評判です。
お客さんの多くは、評判を聞きつけて竹原市外から訪れます。素材の味を生かした品々に、なかにはごはんを5杯平らげたつわものも。
「おいしかったですね。ジャガイモ自体が甘くて」
「ガレットや甘辛煮のアイデアがすごい、すばらしいです」
西野さんはこれからも地元の人の思いと、土地の恵みが詰まったジャガイモのおいしさを伝えていきます。
西野弘美さん
「食べてもらえば、みなさんに吉名町産のじゃがいもがおいしいということが分かってもらえると思います。本当に楽しんで、食べていただきたいです」
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