半世紀続いた老舗レストラン「きりきり善兵衛」が閉店
岩手県大槌町で50年続いた老舗レストランが3月に閉店した。
長い歴史の中には、バブル時代のにぎわいや東日本大震災時の炊き出しなど、さまざまな出来事があった。
地域に愛されたレストランの最後の1日を追った。
大槌町吉里吉里、海を見下ろすレストラン「きりきり善兵衛」。国道45号線沿いで、ドライバーや観光客の食事処として50年営業してきた。
きりきり善兵衛 前川隆太郎代表:
あっという間に最後の営業日。笑顔で迎えて気分よく帰ってもらいましょう
1969年、吉里吉里地区で初めてのドライブインとしてオープンした「きりきり善兵衛」。
創業当時からの名物は、三陸ならではの「磯ラーメン」。
バブル景気の1987年には、隣の山田町に、沿岸部で唯一の遊園地「マリンパークやまだ」がオープンし、店は繁盛した。
しかし、東日本大震災後に進んだ交通網の整備が思わぬ影を落とした。
きりきり善兵衛 前川隆太郎代表:
道が良くなったので、三陸沿岸道路を使って日曜日とかも来てくれる客も。ただ平日の方が少なくなった
2019年、三陸沿岸道路の大槌インターチェンジが開通すると、国道45号線の交通量が減少。
来店客も半分近く減り、売り上げが低迷したことで苦渋の決断となった。
最後の1日 店内からは悲しみの声
午前11時、開店。「磯ラーメン」が次々と注文される。
盛岡市から来た人:
釜石出身なので家族との思い出があって、懐かしいし、寂しい
ーーきょうで最後ですが?
盛岡市から来た人:
言わないでください。涙出てきそうになる…
楽しいひとときだけではなく、苦しいときも支えてきた。
地元の消防団員:
震災の活動をしていて、バスで来て、ここで団員と食べた
東日本大震災の発生から9日後には、倉庫に残っていたラーメンを無料で被災者に振る舞い、悲しみに暮れる人々の心と体を温めた。
地元の消防団員:
(当時のラーメンは)とてもおいしかった
ーー番好きなメニューは?
地元の消防団員:
やっぱり磯ラーメンかな
ーー涙ぐんでいる人もいましたが?
きりきり善兵衛 前川隆太郎代表:
なんていったらいいか、本当に感謝しています
創業当時からの常連:
磯ラーメンを味わいたくて来た。家族総出で。おふくろの味みたいな言葉を引用するなら、そういう部分があるのかな。ここの味は
50年の歴史に幕
この日、閉店発表してから最多の222人が来店。
午後4時半、最後の客が帰った。
きりきり善兵衛 前川隆太郎代表:
ピンとこない。一緒に働いてくれた従業員も寂しくなるねと。やっぱりピンとこない。わたしがやる前のお客さんもあるわけですから、そういうお客さんが来てくれて、当時のことを思ったりすることもあったのかもしれませんけど。心の中に自分たちの店が関わっていただけでもうれしい
楽しいときも苦しいときも三陸とともにあった。
訪れる人の懐かしい思い出を呼び起こし、静かに幕を閉じた。
(岩手めんこいテレビ)
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April 12, 2020 at 03:00PM
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