高級レストランを想像していただきたい。このレストラン、長い間、ある特定の人々の入店を許してこなかったのだが、あるとき、方針を変える。差別はやめて、いろいろな人々に料理を楽しんでほしい▼が、過去の差別の影響もあって、ある特定の人々は店の前でためらい、入ってこない。これでは何も変わらない。店主は考えた。ある特定の人々を積極的に招き入れよう。少しばかり、おまけもしよう▼たとえは悪いが、店主の考えは間違っていると言われているも同じだろう。米連邦最高裁の判決である。大学の入試で黒人やヒスパニックを優遇して合格させるアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)を違憲とする判決を出した。法の下の平等に反するのだという▼一九六〇年代の公民権運動の高まりの中、ケネディ大統領による大統領令が始まりで、差別による不利益を被る人々を優遇し全体の格差を縮める試みである▼効果はあった。黒人らの社会進出を促す一方、これを「逆差別」とする声も残った。黒人と同じ点数を取っても白人は不合格。優遇措置の対象外であるアジア系が犠牲になりやすい側面もある▼それでも差別が解消されていない現状を思えば社会的に弱い立場の者を守ろうとする措置を否定する空気が心配になる。「入試は実力主義で」。もっともらしく聞こえるが、素直にはうなずけない。
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