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Tuesday, January 23, 2024

【朝晴れエッセー】護衛艦とレストランの灯り・1月24日 - 産経ニュース

同期の海上自衛隊員が続々と定年を迎える年になる。80人余りいた仲間はいま何人になっているだろうか。

10代のとき、呉港に停泊する護衛艦の舷門に立ち、冬の夜の寒さに震えながら街の灯を眺めたことを思い出す。とつぜん父を亡くし自ら選んだ道だったが、やはりつらく厳しかった。バブル期の灯りは今よりずっとまぶしく、遠くに見えるホテルの最上階のレストランから、電飾された護衛艦をどんな人たちが眺めているのだろうか、と思いをはせたものだった。

志なかばで退職し民間の企業に勤めることになっても、いつも同期の仲間が心の支えになってくれた。ニュースに映る護衛艦には同期の仲間が乗る。「今の自分の仕事は大変だがあいつらのように命を賭しているわけでもない、大したことはない」。そう思うと頑張れた。40年近くがたち、おかげで会社では責任ある地位に就くまでになった。母を誘い、かつて艦上から眺めたレストランで乾杯した。母は涙を流して喜んでくれた。窓の外遠く今も寒空の下若い隊員が舷門に立つ護衛艦は、夜の呉港に浮かぶ宝石のように見えた。

定年まで踏みとどまり、重い使命を果たしてくれた仲間に伝えたい。ありがとう、そして本当にご苦労さま。今後は民間で一緒に頑張ろう。

箱田幸男(57) 新潟県燕市

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