スウェーデンの首都で北欧最大の都市でもあるストックホルムには、国際色豊かなレストランが数多く存在し、地元住民からの人気を集めている。ここ数年、ブームとなっているのがお酒や料理を気軽に楽しめるレストラン。市街地を中心に次々とオープンしている。だが、これらの飲食店から出るにおいに悩まされている住民も少なくない。日本でも苦情が増加している飲食店が原因のにおい問題について考えたい。(スウェーデン在住ジャーナリスト、共同通信特約=矢作ルンドベリ智恵子)
▽不快と感じるにおいとは
問題となっているのは、ストックホルムにある住宅密集地域。一戸建てが多い郊外と違い、17世紀から18世紀に建てられた古いながらも趣のある集合住宅が立ち並んでいる。レストランやカフェは、こういった住宅の地下階や1階の空き部屋にリノベーションをするなどして使用している。建物の2階より上には元からの住民が生活している。
飲食店の出すにおいの全てが問題を引き起こしているわけではない。出来上がった料理のにおいではなく、調理の際に出るいわゆる「調理臭」を不快に感じる住民が多いのだ。ストックホルムでは、ハンバーガーや薪で焼くピザ、インド料理などを提供するレストランのにおいや油煙に対する苦情が多いという。油煙とは食材を焼いたり炒めたりするときに出る煙のことだ。
ちなみに、日本の環境省がまとめた「飲食業の方のための『臭気対策マニュアル』」によると、2018年に苦情件数が最も多かったのは「焼き肉・ホルモン店」で、ラーメン店、居酒屋、中華料理店が続いている。苦情内容としては、焼き肉・ホルモン店が「客席で肉を焼くときのにおいや油煙」でラーメン店は「スープを煮込むときのにおい」など、ほとんどが調理臭となっている。
▽健康に対する妨害
スウェーデンでは、市民は自治体に苦情を申し立て、店側に改善を求めることができる。調理臭や煙はともに飲食店の排煙設備から出るので大気汚染の一部と考えられているのだ。
においをどう感じるかは個人の感覚によるところが大きい。また、レストランは工場のように環境に悪影響を与える事業に指定されていない。調理には火を使うので二酸化炭素(CO2)などを排出する。しかし、店単位で見ると大量とは言えない。なぜ、改善を求めることができるのか?
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