2023年06月20日16時39分
2017年に千葉県で殺害されたベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん=当時(9)=の両親が、福島県二本松市でベトナム料理店「ハオ・グエン・ショップ」を開業した。二本松の元旅館を買い取ってレストランを先行オープン、旅館の開業準備も進めている。父のレェ・アイン・ハオさん(40)は「ベトナムをはじめ海外の人と日本人の双方に親しまれ、架け橋となるような場所にしたい」と述べ、まな娘への思いを胸に新たなスタートを切った。
◇「ベトナム料理を日本の友だちに」
あれから6年がたった。千葉県松戸市の小学3年生だったリンさんは、小学校の保護者会の元会長に殺害された。ハオさんは死刑を求めて署名活動を行い、100万件以上の署名を集めたが、21年5月に無期懲役が確定した。
それでもハオさんは前を向いた。「ベトナム料理を覚えて、日本の友だちに作ってあげたい」と話していたリンさんの思いを継ぎ、松戸市にベトナム料理のレストランを開く。ただ、新型コロナウイルス禍で経営は苦しかった。
元会長に対しては総額約7000万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こし、東京地裁は21年9月に請求通りの支払いを命じた。しかし、支払い能力がないために賠償金は一銭も支払われていない。
◇看板メニューは牛肉フォー
そんな時、二本松市の旅館「宝龍荘」が売りに出されているのを知った。「これだ」―ハオさんはひらめいた。「ベトナムには温泉がほとんどない。日本の温泉の素晴らしさを知ってもらいたい。コロナの規制が緩和されれば、インバウンド(訪日客)の旅行者も増えるはずだ」
東日本大震災で大きな被害を受けた福島という土地に、「何も悪いことをしていないのに、家族を失った人たちがいる。自分と似ている」と親近感も覚えた。ハオさんは借金を旅館購入に充て、コロナで苦しい経営が続いていた松戸市のレストランは今年3月に閉鎖した。「いまだに風評に苦しむ福島が、実際は安全だということもアピールしたい」と意欲を見せる。
レストランは約60席。看板メニューはリンさんが大好きだった「牛肉フォー」で、ベトナムのサンドイッチ「バインミー」やベトナムコーヒーなど約20種類を提供する。松戸の店は閉めたが、ハオさんは「娘がやりたかったこと(ベトナム料理店)を続けられて良かった。これからも天国で見守ってほしい」と話す。
◇日本で生きていく覚悟
ハオさんを手弁当で支援する人もいる。ベトナムビジネスのコンサルタント会社VCCの斉藤正之社長(59)は、無償でハオさんの旅館の事業計画書を作った。斉藤社長は、今月5日に将棋の棋聖戦第1局が指されたベトナムの「ダナン三日月」を経営するホテル三日月の社外取締役も務めており、「ベトナムとホテルのプロ」だ。
斉藤社長は「黒字化は難しいのでは」とアドバイスしたが、ハオさんは歯をくいしばる。まな娘への思いを胸に、妻のグエンさんと手を合わせ、日本で生きていく覚悟を決めた。「ハオ・グエン・ショップ」は自分と妻の名だ。これから温泉施設の整備などを進め、1~2カ月後には旅館のオープンを目指す。
からの記事と詳細 ( リンさんの両親、福島で再スタート 事件で犠牲の娘の思い胸にベトナムレストラン - 時事通信ニュース )
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