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Monday, May 25, 2020

新型コロナ:三菱重工は最終損益「ゼロ」 重工3社、戦略練り直し - 日本経済新聞

三菱重工はスペースジェットの事業化が遅れ、事業損失が膨らんでいる(写真:三菱航空機提供)

三菱重工はスペースジェットの事業化が遅れ、事業損失が膨らんでいる(写真:三菱航空機提供)

日経ビジネス電子版

重工大手3社が事業戦略の練り直しを迫られている。新型コロナウイルスのまん延によって、成長を託した航空や自動車の関連事業に狂いが生じ、三菱重工業川崎重工業IHIは中期経営計画を新たに策定したり、刷新したりする。三菱重工は複合経営を生かして火力発電をもう一段進化させようとし、川崎重工はロボット事業に期待を寄せるが、激しい競争が待ち受ける。

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三菱重工は2022年3月期から始まる3カ年の次期中計の公表を、予定していた21年春から20年秋へと半年前倒しすると決め策定作業に入った。現行中計の最終年度となる21年3月期はコロナの影響に加え、「スペースジェット(旧MRJ)」の費用がかさんで最終損益はトントンの見込みで、まさに「ゼロ」からのリスタートだ。

現行中計策定時の18年5月時点で21年3月期の純利益は1700億円を見込んでいた。この2年でもっとも環境が激変したのは航空関連だ。

「航空機の構造体やエンジンを伸長分野と位置付けたが、米ボーイングの減産の影響を受けた。スペースジェットは初号機納入予定が20年半ばから開発の遅れで21年度以降へ延期となった」。5月11日のオンライン決算説明会で三菱重工の泉沢清次社長は航空関連事業に吹き付けるダウンバーストの強さを説明した。

スペースジェットは米国での飛行試験が予定より遅れた。当初の納期からすでに7年たったが7度目の延期もあり得る。事業資産を減損し開発費用と合わせて2633億円の損失を計上し、三菱重工の20年3月期の連結純利益は前の期比21%減の871億円に落ち込んだ。航空機需要が長期で戻らなければ、今後の開発機種を減らす可能性もある。

21年3月期もスペースジェットに関係する事業で業績が悪化する。カナダ航空機大手ボンバルディアから買収する小型機「CRJ」事業で500億~700億円の減損が生じる。19年6月に製造部門を除いた保守・サービス事業を5億5000万ドル(約590億円)で買収することで合意し、スペースジェットの保守拠点に活用するつもりだった。しかしスペースジェットの事業資産の減損に伴って、CRJ事業の資産価値についても引き下げを余儀なくされた格好だ。

CRJはすでにおよそ1900機の販売実績がある一方、最初の機種販売から30年近くたつシリーズで設計が古く、新規販売は期待しにくい。つまりCRJの代替を含めてスペースジェットが売れなければ、将来的に立派な保守拠点があっても生かしようがない。

■再び火力発電に軸足

現行中計ではスペースジェットの抜本強化を掲げたが、ひとまず関連する事業資産を減損したこともあり次期中計では位置付けが下がり、コスト削減に重点が置かれる。その一方でスポットライトを浴びるのは火力発電事業の潜在能力をもう一度引き出す戦略だ。火力発電を扱う「パワー部門」は利益の6割を生み出す屋台骨だ。だが、これまでは迷走するスペースジェットに経営資源を注ぎ込まざるを得ず、火力事業への手当てが遅れていた感は否めない。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスとの3強争いの雌雄を決するべく、火力事業を仕切り直すには今が好機と言える。三菱重工が65%、日立製作所が35%を出資する火力発電子会社、三菱日立パワーシステムズ(横浜市、MHPS)について、19年12月、三菱重工が完全子会社化することで日立と合意した。14年2月に事業統合したものの、南アフリカでの石炭火力発電所の建設費用がかさんだ損失負担を巡り、三菱が日立の工程管理不備を訴えていた。

19年12月に両社は和解。三菱重工によるMHPSの完全子会社化は新型コロナのため各国の独禁当局の審査が遅れているものの、今年4月には社名を「三菱パワー」に変更すると先んじて発表した。

三菱重工は火力発電事業の強化を急いでいる。日立製作所との共同出資会社も全額出資に切り替える(写真:三菱日立パワーシステムズ提供)

三菱重工は火力発電事業の強化を急いでいる。日立製作所との共同出資会社も全額出資に切り替える(写真:三菱日立パワーシステムズ提供)

燃料電池や蓄電池、洋上風車、再生可能エネルギーなどグループ内で協業し、業態をこれまでの火力発電専業から総合エネルギーカンパニーへと広げる。これまでは三菱、日立の親会社とそれぞれ重複する事業が多く、MHPSはどちらとも連携しづらい部分があったようだ。

火力発電そのものでも「脱炭素」という商機が眠る。気候変動を防ぐための環境規制を受けて石炭火力には逆風が吹くが、天然ガスやLNGのガス火力は石炭より二酸化炭素の排出量が少なく、ベース電源としての需要は底堅い。なかでも三菱重工のガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)で「JAC形」は発電効率が64%と世界最高クラスを誇る。

このGTCCでは水素を燃料に混ぜてCO2排出量を減らすことも可能で、3月には米ユタ州で水素だきガスタービンを初受注した。水素を使った火力発電設備は世界的にエネルギー転換の有力候補になっており、将来の収益源として期待がかかる。

■川重はロボット、医療にシフト

一方、川崎重工は5月12日、22年3月期を最終年度とする中計で掲げていた営業利益1000億円以上、営業利益率6%以上という目標を取り下げた。電話会見で金花芳則社長は「22年3月期は航空分野に期待していたがどうなるか分からない。前提が変わり、事業の構造を含めてどうするか考えている」と厳しい認識を示した。川重はボーイング向け中型機「787」の胴体を供給している。

航空に代わり、伸びる分野はあるのか。6月就任予定の次期社長、橋本康彦副社長がロボット、医療事業に人員をシフトする計画を練っているという。人と人が接触しにくくなるアフターコロナ時代に合わせて、協働ロボットの需要は伸びる。塗装や切削から段ボールの組み立て、商品の積み込みまであらゆる産業の様々な工程でロボット需要がどこにあるのか検討を重ねている。さらに医療向けに手術支援ロボットといった分野も開拓する。

「(22年3月期までの)現中計を見直し、下期に公表する」。19日にはIHIの井手博最高執行責任者(COO)が電話会見でこう語った。21年3月期については「民間航空機、自動車は大きな影響があるだろう。新規の航空エンジン関係は(需要回復に)数年かかり、収益事業へ人材リソースをシフトする」と危機感をあらわにした。中計見直しに関して「アフターコロナのニューノーマルへ転換するIHIの新たな姿を示す」としたが、具体像は示さなかった。

重工3社は多くの事業を抱えるコングロマリット経営だけに、「非航空」のネタ探しはそこまで難しくないようだ。だが世界経済が落ち込むなかで競争はし烈だ。ロボット事業は世界中の製造業がこぞって強化する。米GEは航空事業で深刻なダメージを受けるが、すでにリストラを終えた電力事業の競争力は高い。シーメンスの電力部門は20年9月末までに分離上場し、気候変動防止に資するエネルギー企業としての独立を急ぐ。事業の関連性の薄い事業を多く持つことは相乗効果を出しづらく、経営資源も分散する。苦境を乗り切れるかどうかは、事業間の壁を取り払って全社で危機をバネにできるかにかかっている。

(日経ビジネス 岡田達也)

[日経ビジネス電子版2020年5月22日の記事を再構成]

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