清里駅前のシャッター通りは、いまや火災にあったような廃墟が放置されている始末だが、ショッピング街は、エアガン愛好者らが模擬戦闘を繰り広げる市街地戦用の“コンバット・タウン”として知られる。 そんな清里で誰もが知る飲食店で、事件は起きた。驚きの光景を目撃した地元住民が語る。 「地元でうまいビールを飲みに行こうと思えば、まずその店が思い浮かぶはずですが、あの晩も女房や子供と久しぶりに訪れました。で、ふと傍らを見ると、その店のオーナーの兄弟の前で、背広姿の中年の男が土下座して、何度も何度も頭を下げているじゃないですか。『なんとか今日だけは勘弁してください』とか繰り返しながら、必死で兄弟の足にすがりついているんです。そのテーブルには、ほかに男女2人が座っていましたが、慄然とした表情をしていました」 タイルの床に頭を何度もこすりつけている男は誰なのか。 「背広を着ていたので、どこかの出入り業者が不始末でもして謝っているのかな、くらいに思っていました。その男性が立ち上がると顔が見え、驚きましたよ。僕らと同じで、数年前に移住してきた知り合いだったんですよ。彼は、夏場は林業をやったり、コンビニエンスストアで働いて、冬場は地元のスキー場でリフト係をやったりして、暮らしています。地元の人たちとは『自分の性格では馴染まないから』って、人里離れた場所の小屋を借りて暮らしている人です。お店にも移住当初から惚れ込んで、僕ら移住者同士、家族ぐるみでよく来ていました。彼の誕生日会を、その店で開いたこともあったんです。常連の彼がどうして土下座しているのか、もうびっくりしました」
土下座の理由
その店のオーナーは、地元の名士中の名士として知られている。 「いつもTシャツを着ていましてね、彼自身は移住者、地元民を問わずに気さくで、ガッツもあふれて勇気をくれる人で、誰からも愛されています。ただ、その兄弟が……」 オーナーの兄弟も、その飲食店の経営に携わり、いつもレジを管理している。 それにしても今どき「土下座」など、もはや半沢直樹の世界以外ではお目にかかる機会などないはずだ。 そこで土下座した中年男性に、ことの経緯を訊ねてみた。 「実はあの日は、僕の知人で、山梨県庁の要職に就いている方が、清里に宿泊されました。彼は東京出身なので、ぜひ山梨でも1、2を争うお店もお連れしようと、わざわざ予約をしたんです。店に着いて、挨拶をした、その瞬間でした……」 オーナーの兄弟は、山梨県庁の職員の前で、「甲州弁がわかるか」と切り出した。 「清里は山梨県庁が嫌いじゃ」と、いきなり甲州弁で怒鳴ったのだ。 「『山梨県庁の感染症対策はふざけてやがる。感染症対策をするためにテーブルの上にパーティーションを置いたら、店の雰囲気が台無しだ。県庁のやつらはそれをわかっているのか』と。観光客が多い山梨県では、グリーン・ゾーン認証という独自の感染症対策を行っています。一定の基準をクリアしたお店には、証明書を出しているんです。彼は『自分の店は規準をクリアできない。県を訴えてやる』と言い出しました。それで僕は『今日お連れした人は担当者ではない。今日は清里で一番おいしいお料理をと思ってお招きした』と何度も言ったのですが、ダメでした。食事どころではない雰囲気になって、それで土下座した次第です。もう本当に参りました」
からの記事と詳細 ( レストラン経営者の前で移住者が土下座 理不尽な怒りに直面する田舎暮らしのリスク(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース )
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