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Friday, March 26, 2021

地方で創業40年、未来に続く「オトワレストラン」の軌跡 - Forbes JAPAN

「最近、音羽さんのところはうまくいってていいね、ってよく言われるんですよ。40年前は誰もそんなこと言ってくれなかったけれどね」。そう言って目を細めて笑う音羽和紀氏は、栃木県宇都宮市「オトワレストラン」のオーナーシェフだ。

数年前から、厨房の指揮は長男の元(はじめ)氏に譲り、サービスは料理人でもある次男の創(そう)氏、ウエディングやマネジメント業務は長女の香菜(かな)氏が担当するが、本人は「まだまだ現役」どころか、自由という翼を得た鳥のように、仕事で全国を駆け回る。

岩手で美食イベントに登壇していると思ったら、数日後には美食学会の聴講に奈良へ、コンサルティングの仕事で静岡に行ったすぐ後に、地元で食育の授業をする──。端から見ているといつ休んでいるのだろうと心配になるが、こんなに楽しそうに忙しい人はなかなかいない。

その音羽氏は2月、フランスのレストラン格付け「ゴ・エ・ミヨ」が選ぶ「トランスミッション賞」を受賞した。同賞は、培ってきた知識と技術を、国や世代を超えて伝えるという貢献が認められた料理人に授与されるもの。地方に根を下ろした、長年の活動が評価された形だ。

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音羽和紀氏。2019年には、アジアで唯一、ルレ・エ・シャトーの「今年のシェフ賞」も受賞した

「料理界のダ・ヴィンチ」に学んで


宇都宮駅から車で10分ほど、コンクリート2階建のスタイリッシュな建物がオトワレストランだ。入り口の壁には地元の益子焼が使われ、モダンな中にも温かみのある雰囲気が迎えてくれる。

客席に向かう通路からはガラス張りの厨房が望める。その壁に飾られた写真は、音羽氏が師と仰ぐ稀代のシェフ、故アラン・シャペル氏だ。写真には、「カズ(音羽氏の愛称)の友情に」というメッセージとともに直筆のサインが添えられている。

1970年に渡欧し、1973年に渡仏。まだまだ海外に行くのが難しかった時代に、音羽氏は日本人として初めて、「料理界のダ・ヴィンチ」とも言われたシャペル氏に弟子入りした。また、のちに氏の著書の日本語訳を手掛けたという深い繋がりがある。

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