新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け始めて、1年が経過した飲食業界。ファストフード業態が持ち直した一方で、酒を提供する業態の店舗は売り上げの回復が見込めない状況が続いている。
日本フードサービス協会が実施している外食産業市場動向調査によれば、2021年3月の居酒屋・パブレストラン業態の売り上げが前々年の3月に比べて32.1%にとどまり、依然として厳しい状況にあることが分かった。さらに4都府県で4月25日に緊急事態宣言が出たことで、酒類を提供する飲食店は休業を、提供しない場合は午後8時までの営業時間短縮を要請されている。
同協会は「居酒屋業態の厳しい状況は今年いっぱい続くのではないか」と危惧している。
時短営業が続き、売り上げは前々年比で大幅減
日本フードサービス協会では会員企業を対象に、外食産業市場動向調査を毎月実施している。これまでは前年同月比のデータを合わせて公表していたものの、コロナ禍が1年続く中で状況を正確に把握するため、21年3月分からコロナの影響がなかった前々年の同月との比較も始めた。
21年3月の調査は225社、約3万7000店を対象に実施。業態はファストフード、ファミリーレストラン、パブレストランと居酒屋、ディナーレストラン、喫茶などに及ぶ。各業態を合わせた全体の売り上げは前年比97.1%で、前々年比では80.4%だった。前々年比で100%を上回ったのは、ファストフードの中でもテークアウトが好調な「洋風」業態の107.9%だけだった。
一方、居酒屋とパブレストランの売り上げは、前年比で60.3%。前々年比では32.1%にとどまっており、厳しい水準にあることが数字に現れた。首都圏の1都3県では2回目の緊急事態宣言が3月21日まで続き、解除された後も午後9時までの時短営業が要請されたことから、業態全体で大きな打撃を受けている。
しかも、居酒屋とパブレストランの苦境は、すでに1年間続いている。20年4月から5月にかけての1回目の緊急事態宣言では、4月の売り上げが前年比8.6%、5月は10.0%と壊滅的な状況だった。6月以降も飲食の他の業態に比べると売り上げが回復せず、Go To Eatキャンペーンが始まった10月でも63.7%止まり。12月以降は2019年と比較すると30%台や20%台で推移している。
業界団体が「休業要請避けて」要望も……
飲食店に対して時短営業の要請が続く中、3度目の緊急事態宣言が検討されていた4月19日、日本フードサービス協会は西村康稔経済再生担当大臣と小池百合子東京都知事に要請を行った。要請は次のような内容だった。
「外食産業は食のみならず国民生活を担うインフラ産業であり、仮にも飲食店に対し、休業要請、あるいは週末の休業要請が行われると、生活者に多大な影響を及ぼすため、休業要請は極力、避けていただくようお願いいたします。
仮に、休業要請を行うに至った場合、外食企業各社は壊滅的な打撃を受けることは必至であり、現在の政府、行政による支援だけでは不十分であり、外食店舗の閉鎖、倒産などの経営危機に直面いたします」
この要請で協会は、飲食店への休業要請を避けることを要望した上で、協力金の増額、雇用調整助成金の特例措置の延長、事業再構築補助金の見直しなどを求めた。
その後、3度目の緊急事態宣言が東京都・大阪府・京都府・兵庫県で4月25日から出ている。飲食店への対応は、酒類やカラオケ設備を提供する飲食店には休業要請をし、提供しない店には午後8時までの時短営業を要請する形となった。
飲食店全体に休業要請が出なかったことについて、協会では「飲食店全体の休業が避けられた点では最悪の事態は避けられた」と見ている。一方で、酒類を提供する店に対する休業要請と、提供しない場合の午後8時までの時短営業要請については、「居酒屋の業態の店舗に、酒を飲まずに食事だけのために来る人はほとんどいないので、非常に厳しい決定になった」と話す。さらに現在、4都府県への緊急事態宣言に加えて、まん延防止等重点措置の対象地域も広がりつつある。
飲食業界はこの1年間、他の業種に比べて休業要請や時短営業要請によって大きな打撃を受けてきた業界の1つだ。それでも新型コロナの感染拡大がおさまらないことで、売り上げ回復への出口は見いだせないまま。協会では「居酒屋など酒類を提供する業態は、今年いっぱいは厳しい状況が続くのではないか」と、飲食店の閉鎖や倒産のさらなる増加を危惧している。
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