Uber Eatsや出前館など、デリバリーサービスは飲食店の利用方法として定着してきている。それに合わせ、「ゴーストレストラン」という飲食店の形態が広がりつつある。
ゴーストレストランとは、デリバリーを専門とする飲食店のこと。ゴーストレストランにはイートインスペースがないため、光熱費や家賃などのコストを抑えることができるといった特徴がある。
本記事では、ゴーストレストランとはどのような仕組みなのか、メリットやデメリット、また実際に導入した企業を紹介していく。
ゴーストレストランとは?
ゴーストレストランとは、デリバリー専門の飲食店のことで、実際に飲食できる客席がない。飲食店といえば、調理場と客席があり、それぞれに担当のスタッフがいるものだが、ゴーストレストランで必要となるのは調理できるスペースと注文を受け付けるweb上のサービスのみだ。
利用したい客は、Uber Eatsなどのデリバリーサービスを通じて注文・決済をする。飲食店側は、間借りのキッチンやクラウドキッチンなどの調理場で、注文の品を調理。デリバリーサービスを通じて料理を提供する仕組みだ。基本的にイートインやテイクアウトができず、デリバリーのみで利用ができる。
元々はアメリカなど海外で人気のサービスで、日本でも2016年に日本進出したUber Eatsなど、デリバリーサービスの影響でゴーストレストランを運営しやすい環境へと変化している。
ゴーストレストランのメリット・デメリットとは?
イートインスペースを持たず、調理場のみで運営していくゴーストレストランにはどのようなメリット、デメリットがあるのだろうか。それぞれ見ていこう。
ゴーストレストランのメリット
初期費用やコストが抑えられる
飲食店を運営すると、店内の装飾に伴う内装工事、外装工事をしなければならないが、ゴーストレストランではそういった初期費用が抑えられる。クラウドキッチンなどの調理場の利用料はかかるが、光熱費や家賃が削減できるだけでなく、ホールスタッフの人件費がかからず、トータルとしてコストが抑えやすいことが特徴だ。
顧客データを獲得し、マーケティングに繋げやすい
客席のある飲食店では、年代や性別などの顧客データはどうしてもアナログに頼らざるを得ない。しかしゴーストレストランでは利用するデリバリーサービスにもよるが顧客データが獲得しやすいのが特徴だ。顧客データによるマーケティングもおこないやすくなるだろう。
メニューやコンセプトの変更がしやすい
イートインスペースを伴う飲食店では、メニューの変更に合わせて、メニュー表も変える必要がある。コンセプトを変える場合は、店内装飾にも影響が出るなど、簡単にはお店のテイストを変更しにくい。ゴーストレストランではメニュー表や店内装飾の変更などをおこなわずに、web上の変更だけでメニューやコンセプトが変えられる。顧客データを基に、お店のスタイルを柔軟に変更することも可能だ。
立地による影響が抑えられる
客席を持つ飲食店では、駅近や住宅街、路面店やビルの中など、立地によって売り上げが左右される。ゴーストレストランも、周辺の飲食店の影響はあるが、実際にお客さんが足を運ぶわけではないため、イートインスペースを伴う飲食店よりも立地による影響は少ないだろう。
ゴーストレストランのデメリット
集客方法がweb中心になる
基本的にはweb上で集客しなければならない。例えば店内の空間や雰囲気、マスターの人柄などで集客をおこなうことはできなくなる。webマーケティングやweb広告といった方法を取らないと、お客さんへの認知度が上がりにくくなる。
デリバリー利用者にターゲットが限られやすい
客席を伴う飲食店であれば、来客者に加えてデリバリーの利用客、テイクアウト客のようにさまざまな顧客が存在する。通りすがりの方や、遠方の方が来店するケースもあるだろう。しかしゴーストレストランではデリバリーの利用客のみが対象となり、ターゲットがどうしても限定されやすい。
お客との関係性が構築しにくい
お出迎え、注文時、料理を運ぶとき、お見送りなど、飲食店ではさまざまなコミュニケーションが取れる。こういったコミュニケーションに加え、ゴーストレストランでは、店長との常連客の何気ないおしゃべりや、飲食する空間といった体験をベースにした価値提供ができない。
ゴーストレストランの事例
株式会社ローソン
ローソンではゴーストレストランの実証実験をスタートした。現在、全国約8,000店に店内厨房があり、デリバリーサービスも2,500店舗以上で展開。これを活かし、ゴーストレストランを今後展開していく予定である。
販売する商品は、ローソンの店舗の商品ではなく、デリバリーで人気のあるメニューから開発。店舗名(屋号)は「ローソン」ではなく、販売する商品に合わせた店舗名だ。Uber Eatsなどで注文を受け付けてから調理を開始するため出来立てを提供できる。2023年2月末に関東圏100店舗、2025年度に全国1,000店舗への導入を目指す。
現在、実証実験をおこなっている店舗は、ローソン飯田橋三丁目店。店舗名(屋号)は「NY飯!チキンオーバーライス飯田橋三丁目店」だ。商品は、ご飯の上にスパイスで味付けされたチキンや野菜を乗せた「NY飯!スタンダード」(税込1,290円、配送料別)。
※上記は2022年1月27日(水)時点での実証実験の概要である。
株式会社イオンイーハート
イオンイーハートでは、2020年10月29日から千葉海浜幕張エリアにてゴーストレストランを展開している。既存店舗のキッチンを活用したゴーストレストランで、取り扱っているのは下記の5ブランドだ。過去に運営していたファミリーレストランなどのメニューから派生した商品などを提供している。
・キーマカレー「グルメドール」
・和食処「和ぐるめ」
・クリスピーチキン「BomDia(ボンディア)」
・中華料理「拉拉麺(りゅうりゅうめん)」
・総菜弁当「彩菜厨房」
株式会社ジェイアール東日本都市開発「ココデリ高円寺」
株式会社ジェイアール東日本都市開発の新たな商業施設として、2021年12月17日に「ココデリ高円寺」がスタートした。
「ココデリ高円寺」は、デリバリーとテイクアウトの両方を扱う新しいゴーストレストランの形態。高円寺駅から阿佐ヶ谷駅の間の高架下で開業している。テイクアウトでは、商品の受け渡しの専門スタッフが対応する仕組みとなっている。
現在展開しているブランドはスープカレー専門店「こくうまや」、焼肉専門店「東京育ち」、フルーツサンド専門店「とよふる」、ハンバーグ専門店「BurgLab 5004(バーグラボコウエンジ)」の4ブランド。
注文は、Uber Eats、出前館に加え、モバイルオーダー&ペイシステム「Okage Go店外版」で承っている。店頭に来たお客さんも逃さぬよう、店頭のキャッシュセルフレジ「Okageセルフレジ」によりその場で購入でき、商品を受け取ることができる。
株式会社Wiaas「Deli Station(デリステーション)」
「Deli Station(デリステーション)」は、2020年9月からフランチャイズ展開がされているゴーストレストランだ。コンセプトは「シェフのストーリーを届ける飲食店」。ジャンルを問わず、さまざまなシェフや企業と共に商品開発やブランド展開を進めてきた。Uber Eats、Wolt、出前館など対応するデリバリーサービスも豊富である。
2022年2月には株式会社Wiaasと株式会社ミリオンプレートが業務提携し、約150拠点に拡大。取り扱いブランドも2社合わせると約100ブランドとなった。
また、Deli Stationと野村不動産グループの都市型商業施設である「GEMS」が掛け合わさり、広いキッチンスペースやキッチンの見える化を推進するなど、次世代型のクラウドキッチンも提供している。
飲食店の新たなスタイルの一つに
ゴーストレストランには、お客さんとのコミュニケーションが取れない側面があるが、開業資金やコストが抑えられるなどさまざまなメリットがあり、飲食店開業へのハードルが下がることに繋がるのではないだろうか。導入事例を見ると既存企業がゴーストレストランの形態を取り入れて展開するケースもあり、新たな飲食店のスタイルの一つとなっていくだろう。
からの記事と詳細 ( 拡がる「ゴーストレストラン」とは?仕組みやメリットを、事例を交えて解説 - リテールガイド )
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