甲府市中心街を代表する老舗レストラン「スコット」が、今月23日で65年の歴史に幕を下ろす。オーナーシェフの早川洋一さん(63)が、両親の介護や人手不足を理由に閉店を決めた。慣れ親しんだ味と早川さんらの人柄を慕って訪れる常連客で、店は連日にぎわっている。(鈴木経史)
スコットは1957年、東京・銀座の洋食店で修業した早川さんの父・半弥さん(92)が創業した。早川さんは大学卒業後、東京・麻布のフランス料理店で腕を磨き、85年に店を継いだ。
気軽なランチメニューからフランス料理のフルコースまで多くのメニューを取りそろえた。ハヤシライスやオムライスに使われる自慢のデミグラスソースは、約1週間かけて仕込んでおり、深みのある味わいが特徴だ。早川さんは「手間をいとわないことがおいしさの理由です」と語り、著名人や県外の客にもファンが多かった。
料理を出すときは、決まって早川さんや妻の恵子さん(63)がテーブルに運び、客と会話を交わすのがスコットのスタイルだ。「料理はもちろんだが、お客さんとのコミュニケーションがあったからこそ65年間続けてこられた」。その証拠に、常連の中には親子3代で通う人や、大切な記念日に利用する人が大勢いるという。
早川さんは閉店について「苦渋の決断」と打ち明ける。昨年末から従業員が1人減って仕事の負担が増えていたことに加え、90歳代の両親も介護を必要としている。後継者がいないことも重なり、早川さんは「体力的にかなり厳しいのが正直なところ。ある日突然閉店してはお客様に失礼だし、自分で道筋を付けるべきだと考えた」と語る。
先月末にホームページや店頭に閉店の知らせを掲げて以来、常連客らが連日店に詰めかけているという。閉店を惜しむ電話もひっきりなしにかかってきており、最終日までほとんど予約が埋まっている。
3日にランチで訪れた甲府市湯村の五味かつみさん(79)は、亡くなった夫や家族と過ごしたクリスマスが思い出に残る。「肩ひじを張らず、本格的な料理をゆっくりいただけるのがうれしかった。すごく残念で、涙が出そうです」と惜しんだ。
早川さんは「スコットの料理は、人とつながる懸け橋だった」と振り返る。今となって思い出すのは、「おいしかった」「また来たい」というお客さんの温かい言葉ばかりだという。「最後の日まで変わることなく、丁寧に仕事をしたい」と気を引き締めていた。
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