神奈川県大和市に店内に迫力満点の動く恐竜がたくさんいる、レストラン兼酒場「ダイナソー」という店があるらしい。
ふだん渋い酒場ばかりをありがたがってしまいがちな酒の穴のふたりが、ただ純粋に、その店を満喫してきました。
太古レストラン酒場
ナオ:先日、『MADE IN YAMATO』っていう、神奈川県の大和市という土地を舞台にして5人の映画監督が短編を撮ったオムニバス映画を見る機会があって。
パリ:はい。
ナオ:大和市内の色々な場所が映るんですが、宮崎大祐という監督の撮った『エリちゃんとクミちゃんの長く平凡な一日』という短編のなかに、でっかい恐竜が周りに並んでるレストランが出てきて、かなりインパクトがあったんです。
パリ:ぼくら、そういう店とあんまり縁がないですよね。つい、渋い酒場ばっかりありがたがってしまって。
ナオ:そうでしょう。特にパリッコさんとふたりだったらそういう店にばかり目がいく。でも、その恐竜の店のことを調べてみたら、そこにはお酒のメニューもあることがわかって。
パリ:へー! 家族連れがメインのアミューズメントカフェっぽいイメージでしたが。
ナオ:そもそも、「太古レストラン酒場」と謳ってて。
パリ:酒場がついてる!
ナオ:そう。酒の場なわけです。でも太古だという。
パリ:太古でもなんでも、酒場なら行くのにやぶさかではないですよ。
ナオ:「太古レストラン酒場DINOSAUR」が正式な店名です。
パリ:はは。用語が4つも組み合わさって。っていうか「太古レストラン」がもうおかしいもんな。僕なら「恐竜のいるカフェバー・ダイナソーズ」とか名前つけちゃいそう。
ナオ:いやーそうですよ。もっと説明しておきたくなりますよね。
パリ: だからこそ、興味が湧きます。
ナオ:そう。こういうところでパリッコさんと飲んでみたらどんな気持ちになるかなっていうのが、興味としてあったんです。
パリ:とにかく行ってみないことにはわからない。
ナオ:と、そんな店に行ってきたという話をこれからさせていただきます!
パリ:行ってきましたね〜!
「ダイナソー」への道のり
ナオ:で、取材当日、私は高座渋谷という小田急線の駅まで行きまして、そこから15分ぐらい歩きました。
パリ:本当は高座渋谷駅で待ち合わせる予定だったんですよね。
ナオ:そうそう。
パリ:ところが僕が地元の駅に向かってみると、その日、朝から自分の使っている西武池袋線が遅延していて。しかも人身事故じゃなく、車両点検のためっていう理由なんだけど、もう3時間くらい電車が止まっているようでした。
ナオ:だいぶ遅延してたんですよね。
パリ:なので、とにかく来たバスに飛び乗って、それが阿佐ヶ谷行きだったので、阿佐ヶ谷に経由で向かいました。ナオさんに、「遅れそうなのでお店集合にしましょう」と連絡して。
ナオ:はい。私だけでひとまずお店に向かうことにしたんですが、駅前がズドーンと広くて、そもそも大和市自体が初だったからすでにけっこう遠くに来た気分で。
ナオ:大和市は横浜市、綾瀬市や町田市に隣接してるんですって。「厚木基地」もあって。
パリ:文化圏の違う風景ですよね。
ナオ:高座渋谷駅の周辺はけっこうのどかな感じでした。自分が行ったことのないスーパーがあったりして、歩くだけで楽しかったです。
ナオ:なのでいろいろ寄り道したかったけど、予約もしてしまっているし、とにかくまずは店を目指しました。
パリ:「すみません、ダイナソー先入っててください!」っていうね。居酒屋ならなんの違和感もないけど。
ナオ:はは。そうですよ。
パリ:で、待ち合わせしてるのが家族でもカップルでもなく、いい大人ふたり。
ナオ:というか、前日に「営業してますか?」とお店に電話で確認したんですよ。そしたらお店の方が「よかったらご予約しておきましょうか?」ってすごく親切に言ってくれて。で、その時に「お子様は何名様でしょうか!」って聞かれて。
パリ:はは! 大前提。
ナオ:「いえ、大人の男性がふたり…で。へへ」みたいになってしまいましたよ。照れる必要はないのだが。
パリ:「お子さんがいる場合は恐竜がよく見える席」とかあるのかもしれないから、毎回確認する質問なのかもしれないのに。
ナオ:自意識過剰でした。
パリ:はは。
ナオ:とにかく予約した時間もあったので遅れぬように向かって。
ナオ:またこの日が暑くてなー。どことなく白昼夢っぽい町を歩き。
パリ:僕は、隣の「桜ヶ丘」というひと駅手前の駅で降りて、そこから向かいました。
パリ:ほとんど同じ風景。
ナオ:はは。空がそっくり。そりゃそうか。
パリ:関係ないけどこの店が良さそうでした。
ナオ:うわ! よさそう! 1個目が「牛肉麺」か。これは食べたい。
パリ:「惣菜」もいいですよね。
ナオ:よくここをスルーしてダイナソーまで来てくれましたね。
パリ:はは。歯を食いしばって。暑いなか15分くらい歩いてね。
パリ:上階が「りらく」なのにちょっと笑った。
ナオ:はは。だいぶ別ジャンル。
パリ:ただ、桜ヶ丘から向かうとなぜか階段で下には降りられず、かなり大回りになるんですよ。かなりピンポイントなダイナソー情報ですが。で、その道が、
パリ:「太古レストラン酒場」へ向かう感じの道じゃない。「ぼくのなつやすみ」みたいな。
ナオ:たしかに!「今日も特に何もすることないなー」っていうヒマな夏休みの感じだ。
ついに入店
パリ:なんてことを思いながら、やっとたどり着いたら、
ナオ:はは。ダイナソー! 私も、
ナオ:とかをのんびり見つけながら歩いていたら、
ナオ:でしたから。
パリ:わはは。ダイナソーが絡むとなんでもおもしろい。だってさ、けっきょく25分くらい遅れてしまったんですよ。大あわてで、「ナオさん、お待たせしてすいません!」って店内入ってったら、
ナオ:ははは。ダイナソー!
パリ:「先に始めててください」とダイナソーの組み合わせがね。
ナオ:「お待たせしました!」「いえいえ全然!」のうしろに、
パリ:はは。もう、合成みたいだもんな。ナオさんの座ってる横が茶色い壁だったらいつもの光景なのに。
ナオ:またいい席だったんですよね。予約したかいがあったというもの。
パリ:確かに! T-REXの真横で。
ナオ:恐竜が運んでくれたように見える。「あいよっ!」って。
ナオ:ドシン! ドシン!
パリ:撮る写真が全部おもしろくなる。
ナオ:天井の高い、倉庫みたいな空間でね。
パリ:だだっ広いアメリカのダイナーみたいな。で、その周囲とか天井に、リアルな恐竜の模型たちが所狭しと。子供のころ「大恐竜博」とかで見た感じ。
ナオ:で、全部ではないけどこれがけっこうリアルに動くんですよね。「プギャー!」って、大きな鳴き声が流れて。
パリ:ジャングル的な、鳥の鳴き声みたいのも聞こえてて。最初は興奮しましたよ、「すげー!」つって。
大迫力!
そしてリアル
「こ、この卵だけは奪わないでください……」
ナオ:ここで仕事の電話とか来たら困りますよね。後ろで「プギャー!」。
パリ:はは! 「すいません、今出先でして…」。
ナオ:「出先ってどこよ?」
パリ:「あの、太古なんですけど……」
ナオ:はは。
パリ:「え? ……彩湖? 埼玉の?」
ナオ:「いや、太古です……。太いに古いで」
ゆるさも魅力のメニューたち
パリ:さらにダイナソーのなにがいいって、すっごいのんびりできるんですよね。また、平日の昼間だったもんで、広い店内に家族連れが2組くらいしかいなくて。
ナオ:しかも「酒場」とあるとおり、子どもは恐竜がいて楽しいし、親は親でちょっとゆっくりお酒飲んだり、もちろんランチやコーヒーを楽しんだりもできるっていう。そういうコンセプトで作られたんじゃないかな。
パリ:ね。想像以上に過ごしやすい。ざっくりとメニューを見てみましょうか。
ナオ:「はらぺこ恐竜のランチメニュー」だ。
パリ:腹減ってんのはこっちなんだけど。
ナオ:はは。本当だ。はらぺこの我々が満腹になるのを、はらぺこの恐竜が狙ってるのか。
パリ:失礼ながら、メニュー構成もちょっとゆるいというか、徹底してないんですよね。「ダイナソーハンバーグランチ」の下に、「スタミナ焼肉プレート」があったり。
ナオ:はは。恐竜は関係なし。もう、普通に美味しそう。
パリ:「お肉好きなアナタに……」って。で、その下が急に「ランチ隕石ジャンバラヤ」ですよ! その説明もいいんだよな〜。
ナオ:ははは。からあげだったんだ! よりによって美味しそうなジャンバラヤに墜落してくれたっていう。
パリ:「太古のナポリタン」「昔ながらのナポリタンです」。太古ってそういうもんじゃないだろ!
ナオ:太古にナポリも何もないもんな。自由度が高い。
パリ:お店側が楽しんでる感じが伝わってきますよね。
パリ:次がさらに良くて。
パリ:「プテラの皮の唐揚げ(鶏皮唐揚げ)」
ナオ:はは。
パリ:この一品にこそ、ダイナソーの魅力が象徴されてますね。
ナオ:本当です。コンセプトと親切さが同居してる感じ。
パリ:ね。で、その同列に「ランチ大根和風サラダ」とか「あったかフォンダンショコラのバニラアイス添え」などが並び、お父さんもお母さんも大満足。
ナオ:やったりやらなかったりなんですよね。太古を。
パリ:そうそう。
ナオ:「春巻きは…あ、太古の枝でいいか! シーザーサラダは……思いつかないからそのままでいいか!」
パリ:これもそうとうおもしろい。
ナオ:ダイナソーどこへやら。
ナオ:もう真顔。真顔の居酒屋です。
パリ:はは。だから価格は、恐竜がいることを考えるとだいぶお手頃なんですよね。
ナオ:そうです。恐竜代がのっていると思えば安すぎるくらい。
パリ:これなんか、要は居酒屋によくあるチンチロリンハイボール。
ナオ:完全に人間の発想です。
パリ:一見なにかのアトラクションっぽいんですけどね。
ナオ:テーマパークのアトラクションっぽさと大衆居酒屋の感じが絶妙に混ざってるのがこの店なのかも。
パリ:おじさんが、ちりんちり〜んとやって「うわ〜! Wサイズ倍額だ〜!」「わはは、部長〜!」っていう世界観と。
ナオ:そのうしろの「プギェー!」と。
パリ:わはは! もうなんでもおもしろい。
ナオ:恐竜たちよなにを思う。
パリ:貸切で結婚式とかやってほしいな。神父さんが「誓いますか?」って聞いたら、新郎が「誓います」って言う前に恐竜が「ギャオー!」。
ナオ:先に誓っちゃってね。後ろに恐竜がいてくれることで全部が変になるんですよね。
パリ:それが最高。
ダイナソーを満喫!
ナオ:僕らのおつまみチョイスなんか、もうだいぶ普通の居酒屋でしたよね。
パリ:はは! そうだそうだ。
ナオ:しかも「プテラの皮の唐揚げください」って注文したら、店員さんが「はい! 鶏皮揚げですね!」って。そう、それでいい。
パリ:はは。そうそう。わかりやすい! 続けて、「おれウーロンハイおかわりしようかな。ナオさん、2杯目どうします?」「え〜と、じゃあ緑茶ハイで」つって。
ナオ:はは。だからもう、テーブルの上は完全にただの居酒屋ですから。
パリ:切り取りかたによってはこうなんですよ。
ナオ:はは。ただ、この私は壁のメニューを見てるんではなく、恐竜を見てますからね。
パリ:「次、なににしようかな〜?」じゃないんだ。
ナオ:ないない。
パリ:最初の興奮はどこへやら、飲みはじめるともう慣れちゃうんですよね。恐竜の声も、居酒屋のガヤガヤくらいにしか感じなくなる。
ナオ:そうそう。心地いいぐらいになってる。
パリ:ティラノザウルスが、たまに少しの間静止するんだけど、それも妙におもしろくなってきて。
ナオ:何十秒か止まってまた動き出す。その間がシーンと静かで。
パリ:「どうしたどうした?」「……おっ動いた」「わっはっは!」。でまた、料理がちゃんとうまいんですよね。
ナオ:うん!
パリ:大根サラダは山盛りだし、鶏皮もカラッと揚がってて。
パリ:で、これ!
ナオ:これだー!
パリ:唯一の「それらしいメニューも頼んで見ましょう」という一品。ちょっと高いかと思いきや、すさまじい量で、3〜4人前くらいありましたね。
ナオ:一家に1皿でいいぐらいの。
パリ:火山のエキスで辛さの調整も可能だし。
ナオ:あ、あれ火山のエキスだったんだ!
パリ:火山のエキスってなんだよ。
ナオ:火山って「エキス」とかそういうのでできてんの? っていう。
パリ:はは。カレーのなかににハンバーグが入ってて、お子さんは喜ぶでしょうね〜。もちろん僕も大喜びでしたが。
ナオ:もちっとした太麺のナポリタンも最高。
パリ:ナポリタンもカレーも、本当に美味しかった。もし近所にあったら、間違いなく通いますよね。家族で過ごしやすいし。
ナオ:ね。店員さんたちも、親切なんだけど、適度にほっておいてくれる感じもあって。
パリ:というか、うちは娘がまだ5歳なので、たぶん恐竜をこわがるんですよ。だから2号店で「太古レストラン酒場」オンリー店舗を作ってほしいです。
ナオ:はは。ダイナソー抜きですか! それは通だな。
パリ:蕎麦屋で「天ぬき」頼むみたいな。
ナオ:「いやぁこれだよ、これ」っていうね。
パリ:半個室っぽい席もあったから、予約時に言えば対応してもらえるのかな。
ナオ:「恐竜ができるだけ見えない場所お願いしたいんですけどー」
パリ:わはは!
ナオ:普通に紹介したいですよね。「僕の好きなナポリタンの第2位は、こちら!」って。
パリ:ははTV番組でね。恐竜はたまに映り込むだけ。
最後はオリジナル日本酒で
パリ:で、またほら。最後にこれまたせっかくだからと、オリジナルの日本酒を頼んだじゃないですか。
ナオ:字面が全部「どういうことなんだ」っていう。
ナオ:ダイナソーで、まさかオリジナル日本酒を飲むことになるとはな。ナポリタン食べてカレー食べて日本酒飲んで。
パリ:やりたい放題だ。
ナオ:「どうだい? 飲むかい?」みたいな。そんな我々のわきを子どもが全速力で通りすぎたり。
パリ:それがまた、ぜんぜん気にならないんですよね。「まぁまぁ、恐竜もいることだし」って許される雰囲気で。あ、でも今回、これができなかったのは残念でしたね。
ナオ:ああ、そうそう! 本来だと、トリケラトプスに乗って店内を一周できたそうなんですよ。それが今メンテナンス中らしくてね。
ナオ:ライドはまた今度だな。
パリ:まぁじゅうぶん楽しめたし、むしろ次回のお楽しみということでね。
フォトスポットも充実
パリ:ただライドのかわりと言ってはなんですが、店の外に置いてある恐竜たちには、自由に乗っていいんですよね。
ナオ:フォトスポットがあってね!
パリ:この写真だけ見たら「USJに行ってきました!」つって友達にラインしてもバレないですよ。
ナオ:飲んだ後だから調子もいい。
ナオ:はしゃいでるなー!
パリ:この、途中の写真もおもしろいですよ。
ナオ:はは。恐竜に乗ろうとしてるところの写真は貴重。このまま乗って帰りたかった。
パリ:ね。駅まで自動運転で。なんせ、またけっこう歩いて帰らないといけないから。
ナオ:恐竜に乗って飲みに行ける未来が来て欲しいです。「太古未来」が。
パリ:太古元年。
ナオ:じゃないよ。
パリ:ははは。遊園地ではないから、外に見えるのが駐車場とマンション。
ナオ:いきなり現実に戻る瞬間ね。いやー楽しかったです。
パリ:宴会コースとかもありましたっけね? 飲み放題とかないのかな。いつか大勢でもいきたい。
ナオ:あったかもしれない。もしなかったらあってほしい!
パリ:「喉かわき恐竜の飲み放題コース」
ナオ:ダイナソー!
パリ:ノドカワキリュウ。
ナオ:フタバスズキリュウみたいなね。勝手に作っちゃって。
パリ:「ギャオー!」って。
パリ:ちなみにそう、その日、大和駅まで戻ってふらりと「鳥清」って居酒屋に入ったじゃないですか。そこがものすごく良かったんだけど、
パリ:全部「プテラの」に見えちゃいましたよ。
ナオ:ははは。
パリ:「プテラの正肉」
ナオ:「プテラのたんもと」
パリ:ナオさんは「プテラのスープ」も飲んでました。
ナオ:プテラのだしが出てたな〜。あとはプテラのうずらの玉子も美味しかった。
パリ:はは。いや、どっちのたまご!?
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