「家庭の味を楽しんでもらいたい」。千葉県内有数の観光スポットの養老渓谷(市原市、大多喜町)で、春秋の年2回、期間限定の農家レストラン「おもいでの家」がオープンする。名物「養老渓谷カレー」の匂いが漂う店内には、運営する女性たちの元気な声が響く。「楽しみながらやっているのが伝わると思う」。代表の大曽根実ゑ子さん(79)はこう語る。
開店するのは、養老渓谷に多くの観光客が訪れる春と秋、それぞれ約10日間のみ。市原市朝生原の「アートハウスあそうばらの谷」内にお目見えする。ただ、昨年9月の台風13号の接近に伴う大雨で近くを流れる養老川が氾濫し、施設は膝下まで土砂で埋まった。後片付けや消毒を急ぎ、11月下旬~12月上旬の秋開催にぎりぎり間に合わせたという。
メニューは、ジャガイモやタマネギなど地場の野菜にシメジも加える「養老渓谷カレー」(500円)や市原産の規格外のナシを活用する「自家製梨だれの焼肉(やきにく)定食」(千円)など。市内の老舗豆腐店の油揚げを使ってふっくらと仕上げる「いなり寿司(ずし)」(500円)も自慢の品だ。
「ここに来れば顔が見られると思ったのよ」。突然、地域住民が来店し、会話が始まる。直売のカボチャを手にした別の客は「どうやって調理したらいい?」。「くつろげると言ってもらえるんですよ」と大曽根さんもうれしそうに笑う。
きっかけは2014年春にさかのぼる。市内で行われたアートイベントにJA市原市の女性部として出店した。終わって間もなく、「続けたい、もっと働きたい」と盛り上がり、「おもいでの家」として継続することにした。
アートイベントの趣向で当初の店内は白壁でおしゃれな雰囲気だった。それが今では、来店した子どもたちが描いた塗り絵が飾られている。大曽根さんは「日ごろ食べている素朴な料理や雰囲気を味わってもらいたくて」と語る。
大曽根さんは地元の郵便局に勤めながら、女性部の活動やボランティアを長年続けてきた。高齢化などで活動が下火になり、08年に女性グループを立ち上げて地域のごみ拾いや花壇作りを始めた。料理の講習会にも取り組み、おもいでの家の運営に生かされているという。
現在のメンバーは70代中心の20人余り。料理の勉強会や開店の準備などで定期的に集う。「高齢になって仲間の大切さを実感している。大切な居場所で、集まるとみんなが元気になる」
一つ下の世代の後継グループもできたといい、「できる限り続けたい。活動を次の世代に引き継いでもらえたら」と望んでいる。(小川直人)
昨年来、物価高が止まらない。しかし、給料はなかなか上がらない。それでも人は食べないと生きていくことができない。結果、食費が家計を圧迫する一方だ。値段ばかりに目が行きがちな今だからこそ、少し視野を広げたい。食の背後にある、数字に表れにくい物語を聞きに、千葉県内各地の食人(しょくにん)を訪ねた。
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